ゴルフ小説「最後のパット」~エピソードⅢ:夢への第一打

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ゴルフ小説「最後のパット」エピソードⅢ:夢への第一打。いよいよ全米オープン選手権が開幕。初日に臨む伊達颯太とキャディの緒方芯。

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エピソードⅢ:夢への第一打

ペブルビーチゴルフリンクスの敷地に入ると、伊達颯太と緒方芯の目に各所で作業する大勢のトーナメントオフィシャルスタッフたちの姿が映った。大会スタートに向けての直前準備のため、黙々と慌ただしく動いている。

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「すごい規模ですねー。これがアメリカのメジャー大会か」
緒方が感嘆の声を上げる。PGAの歴史あるメジャー大会の雰囲気に、伊達も固唾をのんだ。

そうそうたるトッププロとともに

伊達と緒方の二人は受付を済ませ、ドライビングレンジへと向かった。すでに練習を始めている有名なトッププロたちの姿があちこちに見受けられた。タイガー・ウッズをはじめ、伊達と同組でスタートするロリー・マキロイ、ジョーダン・スピースが黙々と球を打ち込んでいる。さらにもう一人の日本人選手、ヒデキ・マツヤマの姿も。

伊達を挟んで居並ぶ出場選手たちのスイングと同時に、ピシッ、ピシッと響き渡るショット音が、ペブルビーチの空気を切り裂く。リズミカルなその音が、伊達の腹に染み入ってくる。

伊達が放つボールも、周りのショット音の旋律に乗るように放物線を描いて鋭く飛んでいく。

いよいよ夢の第一打へ

2組目アウトスタートとなった1番ホールティーイングエリアへ先に着いていた伊達が振り返ると、マキロイとスピースが、フェアウェイへ熱い眼差しを送っている。トーナメントオフィシャル係のコイントスの結果、オナーは伊達。

彼はブルッと、武者震いを禁じ得なかった。

「伊達さん。今を楽しみましょう」
緒方が緊張を解すかのように伊達の肩を軽く叩いて声をかけた。ポンッと触れた緒方の手に呼応するように伊達は鼻から深く息を腹へ送り込んだ。

“Making his first appearance at the US Open. Sota Date, from Japan!”のアナウンスが響き、初出場を歓迎するギャラリーの拍手が会場を覆う。

全米オープン出場が決まった際、本間ゴルフがスポンサーに付いた。緒方は”TW-X”を手に「行こう、伊達さん。ここから夢に向かって」とボールを手渡し、「おう」と応える伊達。

右ドッグレッグの1番ホール。ティーイングエリアに立った伊達は、歓声に応えるように観客に向かって深く一礼。頭上に広がるカリフォルニアの晴れ渡った空も、伊達たちを祝福するかのようだ。

伊達はアドレスに入りドライバーを構え、全身の力をスーッと抜いた。好奇の目で見るマキロイとスピースに加え、観客の視線が伊達に集中する。

彼は軽いフォワードプレスを掛け、テンポよくバックスイングすると、浅いトップからスーッとクラブを振り抜いた。伊達の力感のないスイングにマキロイとスピースが一瞬目を見張る。

「キンッ!」と、シャープな金属音がコースに響き渡り、白球は低い弾道でシュルシュルと唸りを上げながら左ラフ方向へ鋭く飛んでいった。

“No~!” 。ギャラリーの一人から悲鳴にも似た叫び声が上がる。

しかしボールはフェアウェイ左端ギリギリに着弾し、右前方へ弧を描きながらドッグレッグをなぞるように力強くランした。伊達の持ち玉であるパワーフェードの炸裂だ。330ヤードのビッグドライブ。

ギャラリーから直前とは正反対の “Ohー!!” という大歓声とともに、”Good Shot!” の賛辞が次々と上がり、伊達と緒方の全米オープンがついに火蓋を切った。

このコースが極めて難しいことは伊達も十分に理解している。しかし、夢なき者に勝つ資格はない。ティーショットで伊達の胸に付いた火が、メラメラと燃え始める。伊達と緒方の長く厳しい闘いは、ここから。

青く澄み渡るフェアウェイ上、第二打目地点へと歩を進める二人の足取りは、ペブルビーチの風とともに颯爽としていた。

エピソードⅣに続く 》

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