ゴルフ映画「グレイテスト・ゲーム」の紹介。実話をもとにしたゴルフ映画の中で一番好きな作品です。
⛳グレイテスト・ゲーム
原題:The Greatest Game ever Played / 米国映画 / 2005年
主人公は、米国労働者階級のフランシス・ウィメット若干20歳と、キャディを務めた10歳の少年エディ・ローリーの物語。
グレイテスト・ゲームの時代背景
1913年に行われた全米オープンは、三人がプレイオフまでもつれ、フランシスの相手はベテランで強豪中の強豪、ハリー・バードン(※1)とテッド・レイ。
しかも、英国の名誉を担って出場したハリー・バードンは1900年の全米オープン優勝者であり、1896年~1911年の間に全英オープンを5度優勝している当時世界ナンバーワンのプロゴルファーだ。
ハリーは、翌年1914年にも全英オープンを優勝し、最多の6度優勝は未だに破られていない。
ハリー・バードンに続く全英オープン5勝の記録を持つのは、次の4名だけ。
ジェームズ・ブレイド(1901~1910年の間 / スコットランド)、ジョン・H・テイラー(1894~1913年の間 / イングランド)、ピーター・トムソン(1954~1958年の間 / オーストラリア)、トム・ワトソン(1975~1983年の間 / アメリカ)。
グレイテスト・ゲームのあらすじ
プロアマ戦の全米オープンが開催された1913年。アマチュアが参戦できるとは言えこの時代、ほぼ上流階級だけに限られていたゴルフの世界でも全米オープンというビッグトーナメントに労働階級の若干20歳(はたち)の青年フランシス・ウィメットがアマチュアとして出場を決心。
そのきっかけは、伝説のゴルファー、ハリー・バードンとの運命的な縁だった。
さかのぼること13年前の1900年、全米オープン出場のためにアメリカへ来ていたハリー・バードンが、公開エグジビションでゴルフショットのデモンストレーションをしていた会場に、まだ7歳だった少年フランシス・ウィメットが来ていたのだ。
そこでハリーが会場に来ている子どもたちに「次にショットしてみたい子は、いるかい?」と声をかけたとき、思わず手を上げたのがフランシスだった。
力むショットのフランシスにハリーは優しく「グリップは、小鳥を優しく包むように握るんだよ」とアドバイス。これに感銘を受けたことをきっかけに、少年フランシスは次第にゴルフにハマっていくのだった。
ハリー・バードンは、この1900年の全米オープンで見事優勝を果たしている。
それから13年後の1913年、フランシスの地元ブルックラインの「ザ・カントリークラブ(※2)」で全米オープンが開催されることとなった。あのハリー・バードンも来米することを知ったフランシスの元に、全米オープン主催者側から地元選手出場の依頼が舞い込む。
(※2)ザ・カントリークラブ “The Country Club in Brookline”, Massachusetts
ザ・カントリークラブは、マサチューセッツ州ボストン近郊に位置するノーフォーク郡にある町、ブルックラインにあるゴルフ場。
全米オープンをはじめ、全米アマチュアゴルフ選手権、全米女子アマチュアゴルフ選手権が十数年おきに開催される名門コース。
1999年には、ライダーカップが初開催された。2022年には、全米オープンが34年ぶりに開催される予定だ。ちなみにブルックラインは、あのジョン・F・ケネディ大統領(第35代)の生誕地でもある。
労働階級の父の反対を押し切って、全米オープン出場を決心したフランシスの才能をサポートすべくアレックス・キャンベルがコーチを買って出、幼い友人であるエディ・ローリーがキャディを務めることとなる。
一方、英国上流階級からゴルフ発祥の地のプライドを掛け全米オープンの冠奪還を厳命させられたハリー・バードンも実は、ジャージー島の貧しい労働階級出身であった。
誰の目から見てもフランシスの活躍は全く期待されていなかった状況で、全米オープンの幕が開かれた。
ちなみにこの1913年当時は、球聖ボビー・ジョーンズが11歳、モダン・ゴルフの祖ベン・ホーガンが生後1年という時代である。
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グレイテスト・ゲームの見どころ
グレイテスト・ゲームの見どころは、ずばり実話ならではの往年の名選手たちの登場だ。
とりわけ当代一流のゴルファー、ハリー・バードンの心理描写が絶妙で、彼が一打に集中するとき、徐々に周りの景色が消えてゆく様の映像表現が一番印象に残っている。
また、全米オープンというメジャー大会初出場というシチュエーションに加え、20歳になったばかりのフランシス・ウィメットが、プレーオフのプレッシャーに押し潰れそうになっているとき、10歳の親友キャディ、エディ・ローリーが「フランシス!ボールから目を離すな!そのままバチンッと打つだけだ!」と叱咤するシーン。
アマチュアのアベレージゴルファーの心にも、ジンと響く一言だ。
製作スタッフ
製作:ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ(Walt Disney Pictures)
配給:ブエナ・ビスタ・ピクチャーズ(Buena Vista Pictures)
プロデューサー:デビッド・ブロッカー(David Blocker)、マーク・フロスト(Mark Frost)、ラリー・ブレズナー(Larry Brezner)
製作総指揮:デヴィッド・スタインバーグ
監督:ビル・パクストン(Bill Paxton)
脚本:マーク・フォレスト(Mark Frost)
撮影監督:シェーン・ハールバット
衣装デザイナー:レネー・エイプリル
音楽: ブライアン・タイラー(Brian Tyler)
グレイテスト・ゲーム | キャスト
シャイア・ラブーフ(フランシス・ウィメット役)
ほか出演作:『トランスフォーマー』、『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』
ジョシュ・フリッター(エディ・ローリー役 フランシスのキャディ)
スティーブン・ディレイン(ハリー・バートン役)
イライアス・コティーズ(アーサー・ウィメット役 フランシスの父)
ルーク・アスキュー(アレックス・キャンベル役 フランシスのコーチ)
スティーヴン・マーカス(テッド・レイ役)
ペイトン・リスト(サラ・ウォリス役)
マーニー・マクフェイル(メリー・ウィメット役 フランシスの母)
ピーター・ファース(ノースクリフ卿役)※左端
✑ 編集後記
私がゴルフを始めたばかりのとき、会社の先輩が渡してくれたゴルフ本があった。その本は、いわゆるレッスン本の類ではなくエッセイ。
そこには、ゴルフ発祥の14~15世紀から近代まで、さまざまなゴルフのエピソードが書かれていて、私はすっかり虜になった。
とくに、ハリー・バードンやボビー・ジョーンズ、ベン・ホーガンが生き生きとプレイしていた近代ゴルフの黎明期1900年~1950年あたりの出来事が実にユニークに描かれている。
映画「グレイテスト・ゲーム」を観たとき、本作には描かれていないハリー・バードンの知られざるエピソードをそのエッセイ本で事前に読んで知っていたおかげで、より深く楽しんで鑑賞できた。
そのエッセイ本の作家は、夏坂健。
ゴルファーの格あるべき姿が如何なるものなのか? かっこいいゴルファーを目指すための羅針盤と言える。それ以来、夏坂健を愛読している。
夏坂健からゴルフの道へ入ったおかげで、ラウンド中にごまかす気なんてさらさら起きるはずもなく、「ゴルフとはただ、あるがままに打つ」ことを覚えた。
生涯シングルの腕前をキープし続けながら作家生活を全うした夏坂健は、2000年に鬼籍へ入ってしまっている。実に残念なことだ。今は、限られた彼の作品の一冊一冊、一行一行の言葉をじっくりと噛み締めている。